銚子は海の空気の流れている美しいまちです。太平洋と利根川に
囲まれ、犬吠崎や屏風ケ浦等の絶景が見られますが、その他にも
変化に富んだ風景が楽しめます。水と空と大地が作る風光、そして
長い歴史の中で人が作り上げてきたものが溶け合って、多様な
景観を織りなしています。灯台も防風林も銚子電鉄も、人が暮らし
のために生み出したものですが、時を経て不思議な美しさを湛えて
います。このまちには、昔から多くの文人や画家を惹き付けてきた
詩的な雰囲気が、今も漂っているのです。
　また、銚子は夏涼しく冬暖かい、散歩に適した土地です。そんな
銚子に住んであちこち歩いているうちに、まちの中にいろいろな意匠
の石の橋があることに気が付きました。調べてみると年代も様々で、
昭和初期の立派な造りの橋もあります。そういった橋の姿を残して
おきたいと思い、古くからの友人である東史（ひがしふみ）さんに撮影
をお願いしました。東さんは植物詩画の作家で写真も能くし、東京
在住ですが度々銚子に遊びに来ています。
　今回もまちの中の何気ない一角から、銚子の詩情を余さずすくい
上げて作品にしてくれました。
　この写真集をご覧になった方に、銚子の多面的な魅力を感じて
頂けたら幸いです。そして実際にまちを歩いて、「ふるさとじゃないの
に懐かしい」と言われる銚子の風に触れて頂けたらと願っています。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　袖山裕子（そでやまゆうこ）